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明治大学の司法試験漏えい事件に思うこと

平成27年度司法試験の合格発表が9月8日に公表されました。司法試験の合格実績は「大学の実力」を比較しうる数少ない指標なだけに、大学に身を置く者として私も関心を持っています。 今回は、その合格発表の前日に報じられた明治大学法科大学院のA教授による問題漏えい事件について、大学職員の視点から思うところを書き留めておきたいと思います。例によってご関心があれば続きをお読みあれ。

司法試験の不祥事としては今回が初めてではありません。2007年には慶應義塾大学において、司法試験考査委員であったU教授が、試験問題と類似の論点による答案練習会を行っていた咎で、考査委員を解任され、自ら慶應義塾大学を辞職しています(ただし2009年に他大学で復活)。

− 2007年司法試験漏えい問題の顛末 結局、2007年度新司法試験においては、法務省及び司法試験委員会は、「試験への影響はなかった」として特別の措置は一切採らないことと決定したが、こうした対応に対して一部からは批判の声も上がったものの、「法」というものの根幹と言うべき公平を著しく害するおそれのある行為に対して、当該教授の所属する学会をはじめとして、当事者である大学の側はいまだに沈黙を守ったままであり、あまつさえ当該元考査委員は2009年から大東文化大学法科大学院教授に就任しているなど、およそ学界に「説明責任」はおろか、「自浄作用」などとうてい期待できないままの状態にある。ただし、2008年(平成20年)度新司法試験からは、学者出身の考査委員を半減させることなどが決定した。(Wikipedia「2007年度新司法試験漏洩問題」より抜粋)

今回漏えい事件を起こしたA教授は、2007年の不祥事の際も考査委員の主査を務めていました。この時点で法務省と大学業界が断固とした措置を講じていれば、A教授も軽々に試験問題を学生に漏らすことなどしなかったでしょう。 慶応義塾大学を辞したU教授が大東文化大学ですぐに職を得たことを踏まえると、ご当人にしても、大学業界にしても、「どこの大学でも多かれ少なかれやっていること」という程度の認識だったのかもしれません。

さて、考査委員という立場を利用した不正はもちろん論外ですが、そもそも法科大学院では過度な受験指導そのものがルール違反とされています。受験対策に偏ったカリキュラム編成も認められていません。いわゆるプロ受験生ではなく、「多様な人材を受け入れつつ、法曹に必要な資質と能力を養成する」という法科大学院制度の趣旨に反するためです。

その一方で、国は司法試験合格率により補助金を上下させるという相矛盾した政策へと方針転換を図っています。法科大学院は合格率等により大きく3つの類型に分けられ、最も低い類型では補助金が50%も削減されることが決まっています。 司法試験人気が低迷する中でこのようなことをやってしまっては、大学にとって「合格率を上げる教員が良い教員」ということになり、多少のグレーゾーンは黙認せざるをえなくなるでしょう。不正の種を国が培養しているようなものです。

司法試験にまつわる不正行為は、芽を摘むだけでは根を絶やすことはできません。今回の不祥事が個人批判にとどまらないことを願います。

関連リンク 法務省:司法試験の結果について 法務省:法科大学院公的支援見直し加算プログラムの審査結果について

 

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