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国立大学から文学部が消える?

新聞報道ほか各種メディアで既報のとおり、6月8日、文部科学省から国立大学に対して、大学組織の見直しを求める通知が出された。通知の原文は入手できなかったけど、人文社会学系・教員養成系の学部、(合格率の低い)法科大学院の定員削減や組織廃止に取り組むよう求めたとのこと。教員養成系と法科大学院については目新しい話ではないけど、いよいよ人社系もやり玉にあげられたかという感じ。というわけで、今回出された通知と一連の背景について、2004年から続く国立大学改革に触れつつ整理してみたい。例によってご関心があれば続きをお読みあれ。

国立大学改革は2004年の法人化からスタートし、5年刻みの中期目標期間を設定しながら現在も進行中。具体的には、2009年までを第1期、2015年までを第2期、2021年までを第3期としている。第1期は国立大学法人化のソフトランディング、第2期は運営交付金の重点配分による改革加速、第3期は新しい国立大学像の実現に向けた総仕上げを目標にしている様子。ちなみに、2021年は新大学入試制度での最初の1年生が大学に入学する年度。このあたりのタイムスパンを視覚的に示したのが下の表。文字が小さいので詳細は画像のリンク先を参照あれ(文科省資料の2枚目デス)。

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上の表にて第2期と第3期にまたがるように示されている「国立大学改革プランH25.11」がコトの発端だった。同プランでは国立大学の機能強化の方向性として、①世界最高の教育研究の展開拠点、②全国的な教育研究拠点、③地域活性化の中核的拠点の3点が掲げられた。さらに、機能強化のための方策として、以下の文言が明記されている。

各大学と文部科学省が意見交換を行い、研究水準、教育成果、産学連携等の客観的データに基づき、各大学の強み・特色・社会的役割(ミッション)を本年中に整理・公表 #国立大学改革プランH25.11
これが「ミッションの再定義」と呼ばれるもので、全ての国立大学が文科省の指示通り、忠実に実行している。その結果は文科省のホームページで公開されている。 国立大学改革プラン ミッションの再定義 http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/1341970.htm 上記リンク先の一つでも読んでもらえれば分かるとおり、これだけ読んで良し悪しを判断できるような内容ではない。まさに段取りの中の一作業といったところ。人文社会学系や教員養成系を国立大学から閉め出すための準備作業だったのかもしれない。 そして、これを踏まえて出されたのが、「今後の国立大学の機能強化に向けての考え方H26.7」。この文書の別紙として「ミッションの再定義を踏まえた各分野における振興の観点」が付され、以下はその抜粋。ここでいよいよ、人文社会学系が名指しで機能縮小を求められることになる。
人文・社会科学、学際・特定分野は・・・(中略)・・・養成する人材像のより一層の明確化、身に付ける能力の可視化に取り組む。また、既存組織における入学並びに進学・就職状況や長期的に減少する傾向にある18歳人口動態も踏まえつつ、全学的な機能強化の観点から、定員規模・組織の在り方の見直しを積極的に推進 #今後の国立大学の機能強化に向けての考え方H26.7
これと足並みを揃えるように国立大学法人評価委員会が「国立大学法人の組織及び業務全般の見直しに関する視点H26.8」、「国立大学法人の第2期中期目標期間終了時における組織及び業務全般の見直しについてH27.5」を提出した。国立大学法人評価委員会は国立大学法人の改革状況をチェックするための文科省の審議会で、次期中期目標の設定や認証評価基準の策定に影響力を持つ。文書の内容としては文科省の方針を追認するようなもので、以下の記述が盛られている。
「ミッションの再定義」で明らかにされた各大学の強み・特色・社会的役割を踏まえた速やかな組織改革に努めることとする。特に教員養成系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院については、18歳人口の減少や人材需要、教育研究水準の確保、国立大学としての役割等を踏まえた組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めることとする。 #国立大学法人の第2期中期目標期間終了時における組織及び業務全般の見直しについて_H27.5
以上が、冒頭で書いた文科省通知に至るまでの一連の背景と思われる。文科省や国立大学法人評価委員会の文書では「ミッションの再定義を踏まえて」という理由が繰り返されているけど、ミッションの再定義に作文以上の内容があるのかは理解できず、科学技術分野の予算を増やすための既定路線なのかという疑念は晴れない。人文社会学系の研究者は安定ポストがさらに失われることになるでしょう。 という感じでつらつら書きつつ、次回もよろしくお願いします。

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