Twitter界隈でたびたび話題になる「大学職員って楽なんでしょ?」について、「大学職員が暇なんてウソ」とか、「はっきり認めろよ、楽だろ?」とか、現役職員から正反対の主張が飛び交っているので、自分の経験から正直に書きます。
大学職員は楽?について言うと、実際に自分もそう感じた時期もあり、基本的に時間をかければ解決する仕事がほとんど。ただし、その仕事や働き方に身体が慣れてしまうと、仕事の難度ではなく「量に対するキャパ」が下がるので、長く働くほど楽とは感じなくなる。
— 大学職員の部屋 (@unitsuku) February 2, 2020
まず、結論から。
役職無しの課員に限定すれば、大学職員は楽。
自分も他業界から大学職員に転職した当初は非常に驚きましたが、指示された作業を、特段急ぐでもなく処理するだけで、「今日も一日お疲れさん」となります。いまは違うかもしれないけど、銀行・商社の一般職をイメージすると近いかな?と思う。
まあ、いつまでもこんな意識で働かれても困るんですが、入職10年目あたりまでは、「これが仕事だw」と思ってる若手はザラにいます。中には、妙な自信から歪んだ全能感に陶酔し、実は誰でもできる仕事を供給してくれている上司を無能と批判する世間知らずが多いのも、この業界の特徴かと思います。
それはともかく、大学職員の「働き方」の特徴をザックリまとめると、以下の3点に集約されます。読んで字の如しなので説明は割愛。
- ノルマ(個人目標)無し
- 出世競争無し
- サービス残業無し
あと、就業時間が7時間の大学が多いのも、この業界の特徴。法定労働時間と同じ8時間働けば、うち1時間は残業手当が支払われる計算(手取りで月5~7万円UP)になります。これがいわゆる「生活残業」の温床になっているのは言うまでもありません。
このようなことを言うと、大学職員が暇などと認めたくない立場からは、「じゃあ、入試はどうなんだ?教務はどうなんだ?」となります。
実際のところ、大学の入試部署では、センター試験後の繁忙期などは、休日無しの10連勤とかも普通にあります。そこの管理職の場合、繁忙期には月間100時間くらいのサービス残業とかになるので、かなり精神的に辛いと思います。
とはいえ、このような事例も、限られた部署の限られた時期の話であり、繰り返しますが、時間があれば解決できる仕事です。したがって、法定8時間労働+毎月30時間ほどのサービス残業+個人目標(ノルマ)という環境で働いている人からすれば、「大学職員って楽なんでしょ?」ということになります。
さて。。。
以上が「大学職員って楽なんでしょ?」に関する正直ベースの結論なんですが、実際の職場内には「まじ暇ー」とか言ってる奴もいないし、ハッピーオーラを出してる人もいません。むしろ、沈鬱な表情をした人が多いです。この点について、少しだけ話の続きをさせてください。
上でも書いたとおり、大学職員の仕事は(少なくとも役職無しの課員である30代中盤までは)、時間をかければ解決できる作業ばかりです。その時間に対しては青天井で残業手当がつくので、仕事に対する納得感もあります。
ただし、このような仕事や働き方に身体が慣れてしまうと、仕事の難度とかではなく「量に対するキャパ」が下がるので、長く働くほど楽とは感じなくなります。
入職当初は「なにこれ?クソ楽w」と感動できた仕事でさえ、いつしかそれが当たり前になり、そこから少しでも負担が増えることに対して、猛烈な拒絶反応が現れます。
量への耐性を失った大学職員が次にとる行動は、できるだけ仕事に関わらないスタンスからの他人への無関心である。よって、大学職員が最も無駄な労力を払うのは、「誰でもできる仕事を誰にさせるか」ということであり、そこから人間関係の軋轢が生まれる。この業界は同僚同士の対人ストレスが酷い。
したがって、「大学職員=楽」という絶頂感は5年ほども長続きせず、それと対象的に高まるのは、自分と同じくスポイルされた同僚たちへのストレスでしょう。
先ほどの「話の続き」とは、まさにここ。
自分も確かに、「大学職員は楽」と感じたこともありますし、いまも基本的に同じスタンス(上でも書いたように、出世競争のストレスが無いのは大きい)ですが、大学職員がお花畑のような楽園で仲良く働いていると考えるのは大間違いです。
アルバイトにもできる作業を押し付け合う専任職員同士の鍔迫り合い、自分の蛸壺から出てこない年上部下のマネジメント、それとは別に、大学教員との人間関係も大きなストレスになります。
要するに、この業界は・・・
「教職員という同僚同士の対人ストレスが酷い」。
顔も名前も知ってる相手だけに、軋轢が生じるたびに、ストレスが蓄積します。
自分も民間企業で10年ほど働きましたが、ストレスの9割は上司からの詰めであり、人事や経理や営業など他部署に対して不可解な苛立ちを感じることはほぼありませんでした。大学に転職してからは、ありとあらゆる部署とのやり取りで精神が消耗します。
というわけで、最後にまとめ。
ここが大切!
「大学職員=楽」を目指してこの業界を目指している人や、今はまだ楽を謳歌できている現職の方に何か助言ができるとすれば、「業務量への耐性を下げるな」ということで、そうすればいつまでも楽状態を維持できる。量耐性が下がってから入試とかに飛ぶと死にます。
いろいろ但し書きはあるものの、大学職員の仕事(少なくとも役職無しの30代中盤まで)は指示待ちの軽作業が中心なので、「大学職員=楽」という理解は正しい。どれだけ忙しくても時間をかければ解決可能な作業ばかりで、しかも残業手当が青天井だったりするので納得感はある。
ただし、その環境に慣れるほど「大学職員=楽」の感動が薄れるので、恵まれた環境を謳歌しつつも、「業務量へのキャパ」を維持しつつ、ダメ職員の仕事は自分がやってやるよという程度の余裕を失わないこと。これが大切。
そうすれば、ぬるま湯にスポイルされた同僚に対して無駄なストレスを溜めず、世の中平均よりは恵まれた勤務環境への満足感を保てると思う。
あと、上でも少し触れたとおり、難度は低いが時間がかかる業務や、単なる待ち時間を含めた拘束時間の長い部署もあるため、管理職(=残業手当無し)になった瞬間、ブラックに一変する確率がわりと高めです。「40代ヒラ課員などプライドが許さん!」という人は、この点は覚悟しておきましょう。