先日、ある転職情報サイトに「【管理職(課長級)】総合職 ※女性積極採用中」という見出しが掲載されておりました。求人元は言わずと知れた私学の雄、早稲田大学です。
早稲田大学は例年4月と10月に既卒者採用を行っているため、今年もそんな時期かと求人条件をななめ読みしていたところ、給与の項目に眼が釘付けになりました。
40歳課長級のモデル月給が589,750円。一律手当が含まれるとのことなので、管理職手当のほか、通勤・住居・扶養手当などが含まれているということでしょう。
ボーナス実績は公開されておりませんが、おそらく6ヶ月前後だとして、額面年収で1000万円を少し上回るであろう給与水準です。
なお、年収1000万クラスの給与所得者においては、所得税・住民税と社会保険料で額面金額からの控除も大きいため、実際の手取りは45万程度になると思われます。
早稲田大学の給与水準を比較的に考察するため、国立大学といくつかの私立大学について、ネットで情報を拾ってみました。
まず、国立大学については下記のサイトを参照しました。
国立大学職員日記
4.国立大学事務職員の出世上位グループの昇給パターン
http://blog.goo.ne.jp/la_old_september/e/59bae2435e9afc4aab24e7d55dbce49b
国立大学の場合、昇給と昇格はかなり密接な関係にあり、出世しなければ給与も上がらないシステムになっています。国立大学のプロパー職員が40歳で課長に昇格することは極めて稀なケースかと思われますので、早稲田大学のモデル賃金と単純比較はできません。
参考まで、上記のサイトによれば、40歳給与は327,7000円とのことでした。この金額に諸手当を加えたとしても、額面で40万円には届かないでしょう。手取りは30万円を割り込むと思われます。
一方で私立大学については、最も信ぴょう性が高いのは給与規程を公開している麻布大学です。
学校法人麻布獣医学園給与規程
http://www.azabu-u.ac.jp/information/reiki_int/reiki_honbun/w0390032001.html
麻布大学の事務職員の賃金テーブル(俸給表)は、11級32号俸から構成されており、同規程の別表第6により大卒新人は2級2号俸からスタートします。また、給与規程運用に関する規則によると、課長職は7級以上と定められています。
前出の俸給表によれば、課長職7級の給与は1号俸284,300円から22号俸440,700円までとなっています。そして、給与規程別表第8に定められる昇格基準に従い最短で出世した場合、40歳課長職ならば7級8号俸354,100円あたりの賃金になるのではないかと推測します。(もっとも、国立大学ほどではないにしろ、私立大学においても40歳で課長に昇格済みであれば、かなりのスピード出世と言えます)
また、課長手当が3万円となっているため、上記に諸手当を加えれば額面月給で40万円を少し超える金額になるでしょう。 早稲田大学と比較すると、額面月給で15万円以上の差があり、ボーナス6.0ヶ月として年収で270万円以上の差となります。生涯年収では1億近い差になるかもしれません。
また、詳しいデータはありませんが、各大学が事務職員を公募する際に掲載していたモデル賃金を記録しておきましたので、そのうちの幾つかを抜粋します。
東京経済大学や関西大学は給与水準の高い大学ですが、それでも40歳課長職の給与は額面で50万円前後(諸手当込み)ではないでしょうか。
宮城学院大学(40歳月収):375400円
東京経済大学(33歳月収):337600円
関西大学(31歳月収):328300円
神戸女学院(35歳年収):650万円
岩手医科大学(36歳年収):660万円
上記の比較からも明らかなとおり、早稲田大学の給与水準は業界内で群を抜いています。金融や商社などの最大手クラス(30歳前後で年収1000万を超える)との比較では見劣りするものの、定年65歳で、おそらく50歳以降も細々と昇給が続くであろうことを踏まえると、長い目では負けるとも劣らない待遇であると思われます(もっとも、大手企業には社宅制度など額面以外の待遇もありますが)。
今回の早稲田大学による管理職募集にどのような人材が集まるのでしょう。モデル賃金公開の意図からすると、外資系金融や難関資格職あたりを狙っているのかもしれません。また、そうした人々が、大学という独特な組織の中で活躍することができるのか、という点にも興味があります。