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東洋大学既卒者採用でES作成時に押さえておきたい「強み・弱み」

ゴールデンウィークの最中、東洋大学が既卒者採用の公募を発表しました。5月31日の書類提出期限に向けて連休をES作成に費やした方も多いかと思われます。そこで今回、表題のとおりですが、ES作成の際に参考になればと思い、公開情報から同大学の「強み・弱み」について起稿することにいたしました。

データから見る東洋大学の強み弱み
各大学の「強み」と「弱み」をデータに基づいて客観的に分析するならば、もっとも信頼できる情報源は認証評価関連の資料です。ちなみに認証評価というのは全ての大学が7年に1度受けなければならない外部評価のことで、基本的にどの大学もホームページで公開しているはずです。

東洋大学:認証評価(2014年度)
https://www.toyo.ac.jp/site/quality-assurance/72906.html

ではまず、「強み」について。

わたしが認証評価のデータ(上記リンク先の「大学基礎データ」)を見て、最も注目したのが2部(夜学)の学生募集が堅調だという点です。

一般的なお話をしますと、いまの時代、働きながら大学に通う学生というのは稀で、2部(夜学)の学生と言えども勤労学生はほとんどいません。このように存在意義が薄れていること、また、1部(昼間学部)に比べ不人気であることなどの理由から、基本的な傾向として2部(夜学)は廃止の方向へと向かっています。

一方で、東洋大学の場合、2部(夜学)の定員数はオマケ程度の規模ではなく、全入学定員の1割以上を占めています。また、入学定員の3倍程度の志願者がおり、安定的に定員を確保できる状況にあります。一定程度の志願者が存在することは、入試選抜を機能させるうえでも重要なことです。

そして、なぜ2部(夜学)の存在が「強み」になるのかというと、これは単純な話で、朝から晩まで教室をフル回転で営業できるためです。大学の教室というのは、だいたい2限から4限までが使用率のピークで、5限以降はあまり使われていないのですが、2部(夜学)があれば教室を無駄なく使うことができます。昼間学部だけの大学が「ランチ営業のみ」の飲食店だとすれば、東洋大学はランチもディナーも営業しているということで、当然のこと後者のほうが売上を稼げるわけです。

そのほか、認証評価結果の29ページ目以降に東洋大学の「強み」がいくつか掲載されていますが、やはり学校経営の観点から見れば、2部(夜学)からあがってくる15億円の収入(入学金除き)というのは、収入源の限られる大学業界においては、大変な強みだと言えるでしょう。

また、直近のトピックとして触れておきたいポイントが2点あります。
まずは、文科省のスーパーグローバル大学創成支援事業に、東洋大学の「TOYO GLOBAL DIAMONDS グローバルリーダーの集うアジアのハブ大学を目指して」が採択されています。日東駒専からは唯一の採択校で、一橋大学が落選したことでも少し話題になりました。
さらに、2016年度はオリンピックイヤーとなります。東洋大学と言えば箱根駅伝の名門校ですが、水泳の萩野公介選手(文学部4年)のリオ五輪出場が決定しており、短距離の桐生祥秀選手も有力です。グローバル化を掲げる東洋大学にとって、オリンピックは非常に強力なコンテンツだと言えるでしょう。

お次に「弱み」について。

2部(夜学)の堅調さについては前述のとおりですが、もちろん大学全体の学生募集も好調です。その一方で、東洋大学は入学定員に対して実際の入学者数が多いのです。上記URLにて公表されている大学基礎データによれば、経済学部の入学者数は入学定員に対して1.21倍となっており、学部全体でも1.16倍と高めの数字です。

これがなぜ問題なのかというと、文科省は昨年度、「平成28年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について」という通知を発したからで、その内容をザックリ説明すると、平成30年以降、入学定員が1.10倍を超えると補助金を全学不交付にするというものなのです。

平成28年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について(通知)
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/002/002/1360007.htm

実際のところ、東洋大学に限らず、有名大学の中には恒常的に定員超過を維持している大学がけっこうあります。こうした大学にとって、今回の文科省による通知は痛手となるハズで、今後の収支予測を下方修正しなくてはなりません。

定員関係でもう一つ課題をあげると、大学院(特に博士後期課程)の定員未充足が著しいということです。こちらも上述の大学基礎データがソースですが、数字を見れば惨憺たる状況となっています。この点については認証評価においても問題点として指摘を受けています。

大学院の定員が割れるということは、社会から研究大学として見なされていないということであり、グローバル化を標榜する東洋大学にとって、これは大きな足かせであるはずです。収支の問題はもちろんのこと、大学のブランドに傷がつくという意味での問題のほうが大きいでしょう。

なお、高コストの法科大学院も定員未充足が続いていましたが、2016年度から募集を停止済みです。

また、これは直接的に問題があるというわけではありませんが、大学職員の視点からということで、東洋大学は非常に学科数が多いな、ということを率直に感じました。

東洋大学のホームページによると11学部44学科もあるということで、さらに、2017年には4学部5学科が新設される予定です。

学部・学科を細分化するメリットももちろんあるのでしょうが、これだけ数が多く、しかも前述のとおり2部(夜学)や通信制まで設置しているとなると、事務的な煩雑さは限界に達しているのではないかと懸念します。

端的に言えば、学科が多ければ授業数も当然多くなります。それに比例して、シラバスや教育課程表を毎年度作成する際の負担も増えます。会議資料に学部・学科を載せるだけで2ページに及ぶでしょう。その資料を作ったり確認したりするのにも人件費がかかります。

東洋大学はスーパーグローバル大学創成支援事業での採択決定も手伝って、イケイケの拡大路線を歩むものと思われますが、そのシワ寄せがどのような形で出てくるのか、これは無関心ではいられない経営リスクであると考えます。

いろいろと書きましたが、東洋大学は総じて強い大学であることは間違いありません。日東駒専の中では最も勢いがあり、抜きん出た存在であることは、大学関係者の誰もが認めるところと思われます。大学職員の就職先としても非常に優良だと思われますので、ここ一番の力を出し切れることを祈念します。

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