昨今、私立学校の苦しい経営事情が度々報道されているので、就職先を選ぶにあたり大学の経営状況に関心を持つ方も多いと思います。
大学の経営が苦しくなる理由については、18歳人口の減少とか、授業料以外に収入源を広げられないとか、教授会が強すぎて抜本的な経営判断が下せないとか様々ありますが、基本的に私立学校は「経営リスク抱えまくりの中小企業」だと考えた方が無難でしょう。
それでも大学職員になりたい!という方のために、財務諸表が読めなくても経営的な優良大学を見抜く方法をいくつかお示しします。
財務格付を公開している大学
全体に占める割合は少数ですが、財務格付を公開している大学ならまず安全でしょう。
財務格付というのは格付機関が行う長期発行体格付けのことで、「AAA(トリプルエー)」や「B(シングルビー)」などのアルファベットで評価されます。
各大学の格付けは、格付機関のHPで検索できます(「大学」で検索してください)。
上記サイトで調べてみれば分かるとおり、トップ校の格付けはもちろん良好ですが、中堅クラスでも経営状況のよい大学が散見されます。
財務格付は法令で義務付けられていないので、経営状況に自信のある大学しか格付けを受けません。
格付けはタダではありません。格付機関にお金を払って財務状況に格付けをしてもらうわけです。
経営状況に自信の無い大学は格付けなど受けません。わざわざお金を払って悪い格付けを公開する必要などありませんからね。
ですから、財務格付というものは、その格付内容の細かな差異よりも、格付けを受けているか否かの違いの方がよほど重要というわけです。
なお、週刊東洋経済が年に1回、大学の特集を組んでいます。
その中で、「大学四季報」という別冊付録があるのですが、多くの大学の経営状態がアルファベットでランク付けされており、こちらも参考にしてみてはと思います。
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収益学部が強い大学
よく飲食業界の原価率が3割などと言われますが、大学の中にも維持費のかからない学部と高コストの学部があります。
コストのかからない学部を収益学部と呼ぶならば、まさに法・経済・社会学系の学部です。
大学のコストの大部分は人件費ですが、学科ごとに配置すべき教員数は大学設置基準という法令で定められています。
大学設置基準(別表第一)
http://www.kyoto-u.ac.jp/uni_int/kitei/reiki_honbun/w002RG00000949.html#e000001639
上記のリンク先を見ていただけば分かりますが、法・経済・社会学系で求められる教員数は、理工系の半分です。教員人件費だけで、2倍の違いがあるわけです。これに実験・実習に必要な施設設備費を加えると、さらに差が開きます。
昨今、就職に強いという理由で看護系学部の新設が相次いでいますが、看護系も同様の理由から維持費のかかる学部です。
法・経済・社会学系とその他の学部とでは、同じ学生数でも収益性が異なります。
収益学部でどれだけ学生を呼び込めるかが、経営的な底力と言ってもよいでしょう。
認証評価機関からも見分けられる
各大学は「認証評価機関」による評価を定期的に受けることが義務付けられています(これを「認証評価」と言います)。
認証評価機関は文科省が認証した団体に限られ、現在3団体があります。具体的には、独立行政法人大学評価・学位授与機構、公益財団法人大学基準協会、公益財団法人日本高等教育評価機構です。
このうち大学評価・学位授与機構は、主に国公立大学が認証評価を受けています(もちろん、私立大学も受けることができます)。
問題は大学基準協会と日本高等教育評価機構ですが、何がどう違うかという点は、それぞれの団体で認証評価を受けている大学の一覧から推測してください。
前述の財務格付と違い、認証評価は義務ですから、ここはハッキリと色分けがされると思います。
大学基準協会 会員校一覧
http://www.juaa.or.jp/list/university/regular/index.html
日本高等教育評価機構 会員校一覧
http://www.jihee.or.jp/member/list_top.cgi
ちなみに、言うまでも無いことですが、偏差値の高い大学はやっぱり無難です。
偏差値の順に経営状況が良いというわけではありませんが、重要な経営指標と偏差値との間には強い相関関係があります。
志願者倍率も寄付金収入も研究業績も、偏差値40台のグループよりも偏差値60台のグループの方が優れています。スポット的に例外はあるかもしれませんが、この現実は揺るぎません。
もちろん偏差値の高い大学にも部分的な弱みはあるでしょう。しかし、その弱みは「のびしろ」でもあり、同ランクの大学の水準までなら改善する可能性があります。
逆に、偏差値の低い大学が寄付金収入だけトップ校に追いつこうとしても、それは無理な話ということです。