「柳の下のドジョウ」という諺にあるように、柳の下でドジョウが釣れたからといって同じことが2度も3度もあるわけではない。 しかし、少子化問題でお尻に火がついた大学業界では、秋田の国際教養大学に続けとばかり、国際系学部の新設で『2匹目のドジョウ』を狙おうとする大学が後を絶たないのだ。 本日の話題は、明と暗が分かれそうな2大学の国際系学部について。例によってご関心があれば続きをお読みあれ。
国際系学部の明暗について、まずは先行き不安組をご紹介。2015年4月開設の山梨学院大学国際リベラルアーツ学部がそれだ。 山梨学院大学国際リベラルアーツ学部は、1年間の海外留学が目玉の国際系学部。諸費用を含む学費は149.5万円と強気の設定。ホームページや事務組織にもかなりコストをかけていそう(学部長補佐と国際部長をいくらでヘッドハントしたのか気になる)。 しかしながら、蓋を開けてみれば、定員80名に対して、初年度の入試結果は志願者52名、合格者35名であった。入学者はさらに少ないであろうから、定員充足率は余裕で50%を割り込んでいる。 ベネッセのデータによれば、偏差値は48とのこと。少数精鋭というわけでもなさそうだ。(ちなみに、私大最高峰の慶応法学部は偏差値83)
一方で、昨今話題の近畿大学も2016年4月に国際学部を開設する。さっそくYoutubeにプロモーション動画がアップされているので、まずはそちらをご覧あれ。題して「3分でわかる近畿大学国際学部」。
これまで数々の大学プロモ動画を見てきたけど、これはイイね!と唸った。大学入学から留学を経て語学力が向上するストーリーが非常に明快。高校生に分かりやすいのはもちろん、保護者への訴求力がとても強い。なんと留学直後にTOEIC900点を謳っている。TOEIC900点というと、関西外国語大学外国語学部の到達目標(TOEIC730点)よりも遥かに高い。関関同立に届かない我が子が近畿大学に入ればTOEIC900点を達成できるというのだから、親の心をグイッとつかむことは間違いない。 しかも、近畿大学は志願者数11万3千人で2年連続日本一であり、高校生への訴求機会は他大学を圧倒している。志願者数が2千人に届かない山梨学院とは宣伝力がまるで違う。国際系学部の高い学費を負担できる家庭は限られており、どれだけ広く周知できるかが成否を握るだろう。
もちろん、近畿大学にも不安が無いわけではない。前掲のYoutube動画は高校生に夢を持たせる内容だが、英語学習の努力や苦労については一切触れていない。大学入学後にカンヅメ状態で勉強させるか、入学時のハードルを相当程度上げなければ、ドロップアウトが続出しかねない。TOEIC900点がウソになれば、いかに近畿大学と言えども学生を集め続けるのは困難になるだろう。
とはいえ、もしも公約どおり入学者の大半がTOEIC900点を取れたならば、近畿大学の看板学部になることは間違いなく、関西圏での地盤をより強固なものとするだろう。
という感じでつらつら書きつつ、次回もよろしくお願いします。