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AERA「大学職員って今も勝ち組?」に関する読後感と考察

AERA(2016年12月19日号)の大学特集「稼げなければ生き残れない」の中で、「大学職員って今も勝ち組?」と題した記事が掲載されておりましたので、ところどころ抜粋しつつ読後感に一考察を加えてまいりたいと思います。

大学職員って今も勝ち組?

「40歳で年収1千万円超。定時勤務で休みも取れる。そんなイメージがあった大学職員というお仕事。今、そんな現場に変革の嵐が吹き荒れている。」という導入で記事は始まります。

なるほど、たしかに、少子化による受験生減少(いわゆる2018年問題)が目前に迫る中、補助金運営を通じた行政主導の教育改革や、法科大学院の一方的な制度改正など、とりわけ私立大学は「往復ビンタ」のような厳しい環境で、1年1年を慎重に乗り切らねばならないという緊迫感があるのは事実です。「変革の嵐が吹き荒れている」という表現はさすがに大袈裟だと思いますが、様々な環境変化に粛々と対応できない大学は、座して死を待つような状況に追い込まれるでしょう。

とはいえども、少子化という根本的な問題には打つ手が無く、現場には何もできない自身の無力感と、何もしない(ように見える)同僚たちへのフラストレーションが蔓延しています。

わたしの周囲でも「ウチの教職員にはまったく危機感が無い」という不満の声をよく耳にしますが、そう言っている「自称革命分子」たちも、その大半は危機感をつぶやくことで責任を果たしたかのような顔をしているだけなのです。

大学職員は勝ち組か?と問われれば、50代以降は勝ち組として逃げ切り可能でしょう。賃金は大学によって2倍ほどの格差があると思いますが、安定雇用という意味では勝ち組です。40代以下の世代では、大学の二極化が進むことにより、優勝劣敗が明確になるでしょう。あと10年もすれば、文科省が自然淘汰にゴーサインを出すのではないか・・・というシナリオも覚悟しなくてはなりません。

転職組は「バリキャリ」職員なのか?

記事で紹介されている私大職員の女性(37歳)は、学生時代にアルバイトをしていた大学図書館の「大学らしい(のんびりした)」雰囲気に引かれて新卒で就職した。しかし、配属先の課長は当時は珍しかった企業出身の職員で、「定時で帰れることはなく、あらゆることにダメ出しをくらいました。いわゆる『しごき』だったのかもしれません・・・」と語る。(要約)

このくだりを読むと、「生え抜きのプロパー上司はマッタリで、転職組の上司は厳しい」というような印象を持たれると思いますが、わたしの経験上、むしろ人当たりが厳しいのはプロパー上司のほうです。パワハラ系の管理職は、ほぼプロパーです。

当たり前のことですが、転職組は周囲の人間関係に非常に神経を使います。まずは周囲と良好な関係を築けなければ、大学事務局という小さなコミュニティの中で居場所を失います。仕事ですから厳しい指摘も必要でしょうが、それを正論たらしめるのは周囲からの信頼があってこそです。パワハラについても同様で、自分を擁護してくれる人間関係を持っていなければ、そのうち自分に鉄槌が下されます。

転職者はブルドーザーのように現場をかき乱すのではなく、既存の人間関係を観察しつつ、器用に立ち回っていくタイプが多いのではないかというのが実感です。

仕事を「なんとなく」覚える時代は終わる

任期付きで働く別の職員は、前任者との引き継ぎは1日だけ、前任者が残した10ページのメモだけが頼りだった。「せめて任期をずらして2人に増やしてもらうことはできないのか」と語る。

ある新人職員は入職1年目で補助金申請業務を担当したが、仕事が思うように進まず、泣きながら働いていた。「学部のことを理解していなければ務まらない。新人がやれる仕事ではなかった。」ということに気づいたのは、かなり後のことだったという。(要約)

大学事務の仕事は、必ずと言っていいほど、仕事の結果が書面に残ります。仕事の完成形が明確なので、過去の資料に目を通せば、感覚的に手順を習得できてしまうことも少なくありません。ある程度の経験を積んだ職員であれば、手取り足取り指導を受けずとも、新しい業務に対応することが可能でしょう。

しかし一方で、近年、単純作業とは言えないような業務が確実に増えてきています。担当者の手腕により結果に差が出る業務、具体的には、学生支援や研究支援、IRなどの領域です。そのような業務では、前任者から後任者にノウハウが引き継がれないと、仕事の成果がガクンと落ちてしまいます。

また、多くの大学で非正規雇用の大学職員が増えてきています。大学は職員数に応じて国から補助金を貰えますが、専任でも契約でも補助金額は同額なので、国が非正規雇用を後押しするような状況となっています。非正規雇用は今後も、増えることはあっても減ることはないでしょう。

こうした状況にあっては、業務のマニュアル化や引き継ぎに本腰を入れて取り組まないと、定型的なルーチン業務ですら崩壊しかねません。

なお、記事の原文は下記サイトでも公開されています。

大学職員というお仕事「勝ち組」今は昔
https://dot.asahi.com/aera/2016121200217.html

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