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大学ポートレートに関する現場のボヤキ

先日、ツイッターでフォローさせていただいている@toaruunivさんが以下のようなツイートをされており、やっぱり現場の感覚として大学ポートレートはお役所仕事の典型的な失敗例なのだろうなと消沈しました。大学外の方にとって、そもそも「大学ポートレート」というものが初耳かと思われますので、そのあたりの基本的な説明を交えつつボヤいていきたいと思います。

そもそも「大学ポートレート」とは何なのかということですが、簡単に言ってしまえば「官製の大学情報サイト」なのですが、なぜ親方日の丸でそんなものを作ったかのか、その背景と目的は以下のとおりです。

文部科学省が設置した「大学における教育情報の活用支援と公表の促進に関する協力者会議」は 2011年 8 月に発表した「中間まとめ」で、「データベースを用いた教育情報の活用・公表のための共通的な仕組みの構築」を提言した。それを受けて、「大学ポートレート準備委員会(以下、準備委員会)」を発足し、検討を重ね、2012年11月に大学ポートレートの概要が固まった。学校教育法施行規則の一部改定により、2011年 4 月から基本的な教育情報の公表が具体的に義務付けられたが、大学により公表方法はさまざまであり、簡単に確認できない状況にとどまっていることが背景にある。大学ポートレートへの参加は任意だが、実際にはほとんどの大学が参加するものとみられている。(Between 2013年2-3月号)

上記のような経緯で2つの大学ポートレートが作られました。リンクを貼っておきますので、ぜひ現物をご覧ください。

大学ポートレート http://top.univ-info.niad.ac.jp/ 大学ポートレート(私学版) http://up-j.shigaku.go.jp/

なぜ2つの大学ポートレートができたかというと、国公立大学版は独立行政法人大学評価・学位授与機構が運営し、私立大学版は日本私立学校振興・共済事業団が運営しているためです。1つ目のURLは一見すると国公私立大学を串刺し検索できるように見えますが、私立大学については2つ目のURLに飛ばされる仕組みです。

同じ名称のサイトを2つの団体が別々に運営し、URLすら異なるのですから、こんな馬鹿げたことはありません。利用者が混乱することはもちろん、Webサイトの開発運営費も別々にかかっているものと思われます。せめてURLだけでも統一すれば検索エンジンでの検索結果が一本化されるはずですが、そのような事前調整もできなかったようです。 しかも推奨ブラウザがGoogle Chromeということでスマホにでも最適化しているのかと思いきや、iPhone版のChromeアプリでサイトを開いてみると、案の定、以下のような画面が表示されました。もうツッコミどころが満載なのです。

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粗雑な仕事はWebサイトの作り込みだけではありません。大学ポートレートに掲載されている情報自体も非常にお粗末なものです。 下の画像は早稲田大学の大学ポートレート(「本学の学び」ページ)です。早稲田大学のWebサイトへのリンクが2つ貼られているだけで、その他の情報は一切ありません。早稲田大学は情報公開に非常に積極的な大学ですが、大学ポートレートに関しては露骨に手を抜いているのが分かります。 2015年5月に調べた時点では早稲田大学は大学ポートレートに参加していなかったのですが、大学ポートレートへの参加が2015年から経常費補助金の対象になったので、嫌々ながら情報をアップしたのかもしれません。あるいは運営元の私学事業団に「何でもいいから載せてくれ」と泣きつかれたのかもしれません。

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このようにお粗末極まりない運営及び内容ですから、「大学ポートレート」の利用状況も推して知るべしです。以下の数表は大学評価・学位授与機構が公開した2015年3月時点でのアクセス実績です。 数字が見えづらいかもしれませんが、なんとトップページへの1日平均アクセス数が543件という惨憺たる状況です。この数字には大学関係者が更新作業等のためにアクセスした件数も含まれていると思われ、一般利用者はほぼ存在しないと考えて差し支え無いでしょう。 大学側にとっては、自大学のWebサイトの更新と大学ポートレートの更新は完全な2度手間であり、こんな作業のために労力を割くのは本当にやりきれない思いです。

このような大学ポートレートの状況を踏まえると、冒頭のツイートで引用した理事長殿の発言が、現場の感覚としていかに噴飯物か、ご理解いただけるのではないかと思っております。

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