「こんな就活規制は誰のためにあるのか」という大学生の恨み節が聞こえてくるようだ。経団連の榊原定征会長が今月7日、この4月に変更したばかりの就活規制の見直しに言及したからだ。景気回復により企業の採用意欲が旺盛になる中、有名無実化した「紳士協定」に当事者である学生や企業を困惑させている。 今回は、朝令暮改の就活規制について、大学職員の視点から思うところを書き留めておきたいと思います。例によってご関心があれば続きをお読みあれ。
まずは就活規制の変遷を時系列で確認していく。
2012年卒業者 説明会開始10月 採用活動開始4月 2012年~2015年卒業者 説明会開始12月 採用活動開始4月 2016年卒業者 説明会開始3月 採用活動開始8月 2017年卒業者 説明会開始?月 採用活動開始?月
上に示したように、2012年からのわずか4年の間に、2度もルール変更が行われている。経営者団体の一つにすぎない経団連が、これほどまでに企業の採用活動に口を出すのは異常事態と言っていい。 規制変更の顛末についてはご存知のとおり、学生からも企業からも大ブーイング。名ばかりの紳士協定は地に落ち、採用活動をフライングする企業が相次いだ。こうした企業が内定者を逃すまいとする「オワハラ」が、社会問題として広く知られるようになった。「学業に専念できるように」との経団連の説明を真に受けた大学生は、学業も就活もどっちつかずの状況に陥っている。
規制というものは徹底しなければ無用な混乱を招く。自由経済の原則に規制をかけるのだから、社会が付き従うような大義が無ければ実を結ぶはずがない。従業員の雇用すら守れない経営者団体に、そのようなイニシアティブがあるものか。力無き経団連は朝令暮改で社会を翻弄すべきではない。
そもそも就職活動が長期化する根本的な原因は、採用開始時期の問題ではないはずだ。大学進学率が5割を超え、産業の空洞化が進む我が国では、大卒者に対する雇用の受け皿が圧倒的に不足している。第一志望の企業に落ちた大学生が、少しずつ少しずつ、希望条件を落としながら就職活動を続けていく。いきなり妥協はできないから、少しずつ少しずつ妥協する。これが就活長期化の実像ではないだろうか。
ところで、数年前から「学歴フィルタ」という言葉をよく耳にするようになった。大学名による選別の良し悪しについてはここで語らないが、学歴フィルタも就活長期化を後押しする要因だろう。苦労して書いたESが読まずに捨てられるのだから、これ以上の時間のムダは無い。 どこかの新聞で「慶応の方が説明会の受付開始時間が先だった」という中堅大生の嘆き節が紹介されていたが、早稲田や慶応の学生すら必ずしも勝ち組とは言えない。 私自身も採用側でリクルート活動に携わったことがあるが、やはり名の知れた大企業には大学別の採用予定者数というものがある。採用目標の達成が人事部の使命だから、他社との競合が激しい東大生から選考を開始し、東大生から内定を出していく。
学歴フィルタが就活長期化の一因であるならば、企業は大学別の応募者数と採用者数を毎年公開してはどうだろうか。経団連にはそのような音頭取りをしてほしいものだ。