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アメリカの大学では「裏口」があたりまえ ~レガシーアドミッション~

過去に有名芸能人の子息による替え玉受験が大きな話題となったが、基本的に日本の大学入試制度は公平公正が大原則。大企業の社長や総理大臣の息子だからといって東大や早稲田に入学できるわけではない。 一方で、アメリカの大学には「レガシーアドミッション」という入学制度があるのをご存知だろうか。日本人の感覚では明らかな「裏口」である同制度の紹介が本日の話題。例によってご関心があれば続きをご覧あれ。

本稿では米国版Wikipediaに説明に基づき、レガシーアドミッションについて考察を加える。 https://en.wikipedia.org/wiki/Legacy_preferences

「レガシーアドミッション」とは? 「レガシーアドミッション」(もしくはレガシープリファレンス)とは、卒業生や家族といった関係に基づく特定の申込みに対する優遇措置を広く意味する。大学入試におけるレガシーアドミッションは、第一次世界大戦以後にかなり一般的な制度として実施されている。アイビーリーグの大学においては、入学者数の10~30%をレガシーアドミッションが占めていると推測される。なお、ヨーロッパでは一般的にレガシーアドミッションは認められていない。

日本の中堅以下の大学でも定員確保のために「子弟推薦枠」を設ける例はあるが、アイビーリーグのようなトップクラスの大学において、入学者の10~30%をレガシーアドミッションが占めるのだ。レガシーアドミッションがいかに米国社会に深く根付いているかが分かる。 ちなみに、英語が話せないと揶揄されたジョージ・W・ブッシュ大統領もイェール大学の出身である。彼もレガシーアドミッションの利用者なのだろうか。

レガシーアドミッションの効果(大学入試における優遇度) レガシーアドミッションはスポーツ選抜やマイノリティへの差別撤廃措置と同じように、大学入試において優遇的な扱いを受ける。3つの大学を対象に行った調査によれば、大学入試における各種優遇措置の優遇度は以下のとおりである。(数字は各種優遇措置の優遇度を、米国の大学入試で使われる旧SATスコア(1600点)に換算したもの) 黒人:230 ヒスパニック:185 アジア:-50(マイナス) スポーツ選抜:200 レガシーアドミッション:160

黒人やヒスパニックへの優遇が非常に大きい点に驚く。これは差別撤廃を目的としたもので、いかにもアメリカ的な制度だと思う。一方で、アジア人に対しては不利益措置が講じられているのが悲しいところ。 これらに比べればレガシーアドミッションの優遇度は低く、卒業生の子弟子女だからといって合格が確約されるわけではないことがわかる。ハイレベルな競争となるトップレベルの大学においては大きなアドバンテージとなるには違いないが、元々の成績が悪ければ落ちることもザラだということだろう。

レガシーアドミッションへの批判 米国の私立大学は卒業生からの寄付金への依存が大きいため、「レガシーアドミッションは大学を金で売っている」との批判がある。さらに、レガシーアドミッションは「大学入試における学力考査を軽んじ、寡頭制(少数の人が社会を牛耳ること)や金権政治を定着させる」、「富裕層に対してカースト制度がごとき抗い難い利得を与え、社会における富の流動性を妨げる」といった見方もある。 大学側の考え方としても、レガシーアドミッションの主目的は寄付金の増大である。ただし、統計的にはレガシーアドミッションが寄付金を増大させているという証左は無い。(もちろん、個別の事例に着目すれば、レガシーアドミッションに申し込もうとする卒業生家族による寄付金額は増える) 特定層を優遇する大学入試制度への反対派は、オックスフォードやケンブリッジといった欧州の大学ではレガシーアドミッションやスポーツ選抜を実施しておらず、また、公立学校におけるレガシーアドミッションの実施は合衆国憲法に違反すると主張している。

レガシーアドミッションについては当然ながら批判がある。マイケル・サンデル先生のハーバード白熱教室でもレガシーアドミッションの是非が議論されていたはず。 日本の大学でも昨今、収入の多元化に向けて寄付金額の増大を目論んでいるが、その際に米国の大学の寄付金が引き合いに出されることが多い。 しかしながら、米国の大学は寄付金増大のためにレガシーアドミッションを活用しており、単純に日本と比較することはできないはず。

まだまだアメリカについて知らないことばかりだと感じつつ、今回はこのあたりで。次回もまたよろしくお願いします。

 

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